登山で膝が痛くなるのはなぜ?―膝のケアとPRP治療で“好き”を続ける方法についてー

はじめに

こんにちは!さくら通り整形外科クリニック 院長の宇賀治 修平です。

今回は「登山と膝の痛み」についてお話していきます。

近頃、当院に来院される方の中にも、「登山が趣味なんです」とおっしゃる方が増えてきました。

日帰りで手軽に楽しむ方から、本格的な山装備で数日かけて山に挑む方まで、登山スタイルは人それぞれ。

自然の中で心と身体をリフレッシュできる登山は、本当に素晴らしいアクティビティですよね。

一方で、こんなお悩みもよく聞きます。

“登山の後に膝が痛む”

“下り坂の途中で膝がガクッとくる”

“膝が心配で登山の頻度を減らしてしまった”

せっかく好きになった登山を、膝の痛みであきらめてしまうのはもったいないことです。

そこで今回は、なぜ登山中に膝が痛くなるのか?その原因と対策、そして当院でも取り入れている“PRP治療”という選択肢について、詳しくご紹介していきます。


なぜ登山で膝が痛くなるのか?

登山中に膝が痛くなる主な原因は、大きく2つあります。

① 歩き方による衝撃

登山では、舗装された平地とは違い、凹凸のある不安定な道を登ったり下ったりします。

その際に身体を支えるのは、ほとんどが下半身の筋肉と関節です。

中でも要注意なのが「下り坂」。

下りでは、体重が前方にかかりやすく、着地のたびに膝へ大きな衝撃が加わります。

特に太ももの前にある「大腿四頭筋」が疲れてくると、その衝撃が直接、膝の関節に伝わってしまい、痛みを引き起こすのです。

② 筋力・柔軟性の不足

もう一つの要因は「筋力」と「柔軟性」です。

登山では長時間にわたって歩き続けるため、持久力や筋肉のバランスがとても重要になります。

とくに膝の安定に関係するのが、

  • 大腿四頭筋(太もも前)

  • ハムストリングス(太もも裏)

  • 内転筋(内もも)

  • 下腿三頭筋(ふくらはぎ)

    などの筋群。

これらの筋力が不足していたり、使い方が偏っていたりすると、膝への負担が大きくなり痛みが出やすくなります。

さらに、関節の柔軟性が不足していると、一部の筋肉や靱帯だけに負荷が集中してしまうため、怪我や慢性痛の原因になることもあります。


膝を守るための歩き方のコツ

膝の負担を軽減するためには、日頃の歩き方にも意識を向けることが大切です。

特に「下り坂」での歩き方のポイントは以下の2点:

  • 歩幅を小さくする

    → 一歩ごとの衝撃を小さくできる

  • 膝を軽く曲げながら優しく着地する

    → 膝関節のクッション機能が発揮されやすくなる

“ドンドン!”と勢いで下るのではなく、“そっと”“ゆっくり”を心がけることで、膝への負担は大きく変わります。


登山グッズ(ノルディックウォーク)の活用

膝の負担を軽減するためにもう一つご提案できることとして、登山グッズの活用があります。

特に「ノルディックウォーク」を活用することで膝への負担をかなり軽減できます。

3つのメリット:

① 膝の負担を軽くする

ポールを使うことで、腕で体を支える力が加わり、膝への衝撃がやわらぎます。

下り坂では特に効果を実感しやすいです。

② 転倒のリスクを減らす

不安定な足場でも、ポールが「もう1本の足」のような役割を果たし、バランスを取りやすくなります。また、バランスを崩した際にもポールを突き出すことでバランスを元に戻すことが可能です。

③ 全身運動になり疲れにくい

足だけでなく腕も使うので、体全体をバランスよく使える=疲れにくい!

運動量もアップして健康効果も高まります。

膝の怪我をする原因に「バランスを崩し、膝を捻る」、「疲労により膝周りの筋肉で体を支えられず、膝関節に直接の負担がかかる」ということが挙げられます。

しかし、ノルディックウォークはそのリスクを軽減することができます。

正しい使い方のポイント:

地形 ポールの使い方 ワンポイント
平地 肘が90度になるような長さで、体の横にポンポンと軽く突く リズムよく歩くイメージ
登り 少し短めにして、体の前にポールを出す 体を前へ押し出すサポートに
下り やや長めにして、前方にポールを突く 膝のブレーキの代わりになります

使う時の注意点:

  • ストラップは手首にしっかり通すことで、力を逃さず使えます。

  • 設置場所はよく見る:岩と岩の間や滑りやすい場所には要注意。

  • 膝が不安な方はインソールやサポーターと併用するのもオススメ!

予防には筋トレとストレッチが効果的!

膝を守るために特に大事なのが、「膝を支える筋力」の強化です。

おすすめの筋トレには、

  • スクワット(膝を痛めないように深くしゃがみすぎない)

→登山では長時間の登り・下りを繰り返すため、大腿四頭筋・ハムストリングス・臀筋・腓腹筋・ヒラメ筋などの持久力と筋力が求められます。スクワットはこれらの主要な下肢筋群を同時に鍛えることができます。

  • レッグエクステンション(大腿四頭筋の強化)

→登山では「下り坂」での膝への負担が非常に大きく、大腿四頭筋による減速コントロールが必要です。レッグエクステンションは、特に内側広筋などを意識的に鍛えやすく、膝蓋骨の安定や膝関節周囲の安定性を高めるのに有効です。結果的に、膝の痛み(いわゆるハイカーズニー)や不安定感の予防に役立ち、「下り坂」での膝への負担を軽減させることができます。

  • ブリッジ運動(お尻・裏ももを強化)

→登山では、股関節の伸展動作(=お尻で体を持ち上げる動き)が繰り返されます。ブリッジ動作では、大臀筋が主動筋として強く働き、坂道や段差を登る時の推進力の向上に直結します。大腿四頭筋に頼りすぎず、効率的に全身を使って登るフォームが身につきます。

さらに、

  • 股関節・膝・足首の柔軟性

  • 背骨や骨盤の安定性

    も重要です。

ストレッチや体幹トレーニングを組み合わせて、全身をうまく使えるようにしていくことが、膝への負担を分散する秘訣です。


それでも膝が痛い…という方へ

―PRP治療という選択肢―

「しっかり筋トレしても痛みが残る」

「登山後に膝の腫れや引っかかりがある」

という方には、PRP治療(多血小板血漿療法)という新しい再生医療の選択肢があります。

PRP治療は、自分の血液から“傷を治す成分(成長因子)”を抽出して、痛みのある関節や腱などに注射する方法です。

自然治癒力を高め、組織の修復を促す働きがあり、次のような方におすすめです。

PRP治療が向いているケース

  • 軽度〜中等度の変形性膝関節症

  • 靱帯や半月板の損傷に伴う炎症

  • 長引く膝の痛みで、他の治療で改善しにくい

  • 手術は避けたいけれど、効果的な治療を求めている

注射だけの治療で、入院や手術は不要。

アスリートの世界でも使われている再生医療として、近年注目されています。


登山を長く楽しむために

登山は、年齢に関係なく楽しめる素晴らしい趣味です。

だからこそ、膝のケアをしながら、できるだけ長く楽しめる身体づくりをしていきたいですね。

  • 歩き方を工夫する

  • 日頃から筋力と柔軟性を高める

  • 痛みが出たら早めに専門家に相談する

  • 必要であればPRP治療なども検討する

このように、「正しい知識」と「ちょっとした意識」が、あなたの登山ライフをより安心で快適なものにしてくれます。

「膝が心配で、山に行けていない」

「このまま悪化してしまわないか不安」

そんな方も、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

あなたの“好き”を、ずっと続けていけるように。

私たちはそのサポートを全力でさせていただきます!

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