はじめに
「突然、膝に激痛が…」「原因がわからず不安…」
そんな経験はありませんか?実は、膝の痛みは年齢や生活習慣、スポーツ歴などにより多岐にわたる原因が存在します。この記事では、整形外科の専門医の視点から、膝が急に痛くなる10の原因とその対処法について分かりやすく解説します。
1. 変形性膝関節症:60代以上の女性に多い
加齢により膝関節の軟骨がすり減り、骨同士がぶつかることで痛みが出ます。膝の内側に痛みを感じることが多く、「朝起きたときにこわばる」「歩き出すと痛い」などが特徴です。
対処法:ヒアルロン酸注射、筋力強化、減量、サポーター装着などが効果的です。
2. 半月板損傷:スポーツ選手や高齢者に多い
膝のクッション役を果たす半月板が、ジャンプや切り返し動作、事故、加齢による膝の摩耗などで傷つくと痛みが出ます。膝の引っかかりやロッキング(動かなくなる)も特徴です。
対処法:軽度なら保存療法。症状が続く場合はMRI検査を受け、必要であれば関節鏡下手術が検討されます。
3. 靭帯損傷:20〜30代に多いスポーツ外傷
膝を支える靭帯(前十字、後十字、内側側副、外側側副)が損傷されると、膝が不安定になり痛みます。ケガの瞬間に「バキッ」という音を伴うこともあります。
対処法:軽度はリハビリで対応することが可能です。しかし重度の場合や膝がグラグラする場合は靭帯再建術が必要になることもあります。
4. 鵞足炎:準備不足やフォームの崩れが原因
内ももの筋肉が付着する「鵞足」に炎症が起きて痛みが出ます。サッカーやバスケットなどのスポーツで多く見られます。これは逆に注射であっというまに楽になるときがあります。
対処法:ストレッチ、フォーム改善、運動後のアイシングなど。
5. 腸脛靭帯炎(ランナー膝)
長距離ランナーに多い外側の膝の痛み。靭帯と骨の摩擦により炎症を起こします。
対処法:ランニングフォームの見直し、休息、ストレッチなどが有効です。ご自身でのマッサージも指導させてもらいます。
6. 膝蓋腱炎(ジャンパー膝)
膝の前面、お皿の下に痛みが出る疾患で、ジャンプ動作の多い競技者(バスケット、バレーボール)に多く見られます。膝蓋腱に注射をすることもあります。
対処法:膝の負担軽減、ストレッチは十二分に行う必要があります。
7. ベーカー嚢腫:膝裏にコブのような腫れ
関節液が過剰に分泌され、膝裏にたまることで腫れや違和感を生じます。関節リウマチや変形性膝関節症の合併症としても知られています。膝のうらがパンパンになる感じがあります。
対処法:原因疾患の治療、必要に応じて針を刺して水抜きや注射を行います。
8. 関節リウマチ:自己免疫の異常で起こる
免疫が自分の関節を敵と認識して、攻撃することで、膝を含む多関節に痛みや腫れを生じます。女性の30〜50代に多く発症。早めの治療が重要となります。
対処法:抗リウマチ薬や生物学的製剤による治療。早期発見が鍵!!
9. 痛風:尿酸値の異常が引き金
突然の激しい膝の痛みで目が覚める、というケースが特徴。特にビールや肉の摂取過多で発症リスクが高まります。日頃から健康診断で異常を指摘されている場合は特に注意が必要です。
対処法:痛風発作時は抗炎症薬や痛風発作を抑える薬を用います。再発予防には食事管理と尿酸値コントロールが望ましいです。
10. 深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)
長時間の同一姿勢(飛行機やデスクワークなど)により血流が滞り、血栓が膝裏にできて痛みや腫れを伴います。最悪の場合は命に関わります。非常に注意が必要な状態です。即刻、病院を受診したほうがいいと思います。
対処法:早期診断と抗凝固療法。予防には適度な運動や水分摂取が重要。
部位別の痛みと考えられる原因
痛みの場所 |
疑われる疾患例 |
---|---|
膝の内側 |
変形性膝関節症、鵞足炎、半月板損傷、内側側副靱帯損傷 |
膝の外側 |
腸脛靭帯炎、外側半月板損傷、外側側副靭帯損傷 |
膝の裏側 |
ベーカー嚢腫、深部静脈血栓症、後十字靱帯損傷 |
膝の痛みに対する治療法まとめ
1. 保存療法(手術をしない治療)
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薬物療法:鎮痛剤、消炎剤、リウマチには抗リウマチ薬
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関節注射:ヒアルロン酸やステロイド注射で炎症緩和
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装具療法:サポーターや膝装具で関節の安定性を確保
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運動療法/ストレッチ:筋肉の柔軟性と筋力向上で膝の負担を軽減
2.再生医療(PRP・エクソソーム治療)で手術を回避する選択肢
「保存療法で改善しないけれど、手術には抵抗がある…」
そんな方に注目されているのが、再生医療です。近年では、患者さん自身の細胞や血液から抽出した成分を活用して、関節の修復や炎症の抑制を図る方法が進化しています。代表的なものが「PRP治療」と「エクソソーム治療」です
PRP療法(多血小板血漿療法)とは?
PRP(Platelet-Rich Plasma:多血小板血漿)は、患者さん自身の血液を遠心分離して得られる血小板が濃縮された血漿です。血小板には成長因子が豊富に含まれており、組織の修復や再生、炎症抑制作用があります。
【特徴】
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自己血を使うため副作用が少なく安全性が高い
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炎症を抑えて痛みを軽減
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軽度から中等度の変形性膝関節症に特に効果的
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日帰り治療が可能
エクソソーム療法とは?
エクソソーム療法とは、骨髄や臍帯から採取した幹細胞を培養した際に得られる上清液に含まれるエクソソームを患部に注入し、組織の回復を促します。軟骨細胞に直接働きかけて再生を促進し、関節内の炎症環境を正常化し痛みや腫れを抑える
【特徴】
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軟骨細胞に直接働きかけて再生を促進
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関節内の炎症環境を正常化し痛みや腫れを抑える
-
日帰り治療が可能
PRPやエクソソーム治療は、従来の保存療法や手術に代わる「第三の選択肢」として、多くの患者さんから注目されています。
これらはあくまで“治療の選択肢の一つ”ですが、「膝の痛みを少しでも軽くしたい」「手術は避けたい」と考える方にとって、大きな希望になるでしょう。
まとめ:膝の痛みは早めの受診が鍵
膝の痛みは、放置すると悪化して慢性化し、治療も長引きます。もし膝に「いつもと違う痛み」や「違和感」がある場合は、できるだけ早めに整形外科を受診しましょう。
特に、突然の腫れや強い痛み、歩行困難などがある場合は放置せず、すぐに専門的な診断を受けることが大切です。
引用文献:
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介護予防の推進に向けた運動器疾患対策について 報告書(厚生労働省, 平成20年)
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Bannuru RR, et al. “Therapeutic trajectory of hyaluronic acid versus corticosteroids in the treatment of knee osteoarthritis.” Arthritis Rheum. 2009 Dec 15;61(12):1704-11
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Sundman EA, et al. Am J Sports Med. 2014 Jan;42(1):35-41
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Filardo G, et al. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2011 Apr;19(4):528-35
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