膝の健康を守ろう!半月板の役割とPRP治療による最新ケア

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はじめに

いよいよ夏本番に向けて、暑さが増してきましたね。

この季節は外出や運動の機会が増えることもあり、膝に違和感や痛みを感じて来院される方が増えてきています。

実は私自身も、運動しやすいこの時期を活かして、毎日ランニングに励んでいます🏃‍♂️

適度な運動は健康維持にとってとても良い習慣ですが、無理をすると膝まわりの筋肉や軟部組織に負担がかかり、“半月板の損傷”などの原因になることもあります。

本記事では、膝の「クッション」の役割を果たす大切な組織「半月板」について、

その基本的な働きから、損傷の原因・予防法、そして注目されている再生医療「PRP治療」まで、幅広くわかりやすくご紹介します。


① 半月板とは?膝の縁の下の力持ち

膝関節は、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)から成り立ち、その間に存在するのが「半月板」です。軟骨でできたこの構造物は、次のような役割を担っています。

  • 衝撃を吸収し、骨同士の衝突を防ぐ

  • 関節の安定性を高める

  • 膝の動きをスムーズにする

半月板は内側と外側に一つずつ存在し、それぞれ「内側半月板」「外側半月板」と呼ばれます。とくに内側半月板は外側に比べて固定されており、損傷しやすい部位として知られています。


② 半月板が損傷する主な原因とは?

半月板が傷つく原因には、次の2つのパターンがあります。

【1】急性損傷:スポーツや事故による強い衝撃

スポーツ中の急な方向転換やジャンプの着地、転倒などによって、膝をひねったり、過度な負荷がかかることで半月板が裂けてしまうことがあります。

特に若い世代やアスリートに多くみられるパターンで、膝に「引っかかり感」や「ロッキング(膝が途中で引っかかって動かなくなる現象)」が出ることも。

【2】加齢や変性による損傷

高齢者に多いのがこちらのパターン。加齢とともに半月板の水分量や弾力性が失われ、日常生活レベルの動作でも裂けやすくなります。

これを「変性断裂」と呼び、階段昇降や正座などの動作で痛みを感じることがあります。


③ 半月板損傷と変形性膝関節症の関係

半月板の損傷は、進行すると変形性膝関節症のリスクを高めると言われています。

損傷した半月板は、衝撃吸収の機能を十分に果たせなくなり、骨同士の摩擦が増えることで、関節軟骨がすり減りやすくなります。その結果、関節に炎症が生じ、痛みや腫れ、関節の変形が進行していきます。

このように、半月板の健康状態を保つことは、将来的な関節の変形や慢性痛を予防するためにも非常に重要なのです。


④ 自宅でできる!半月板を守るトレーニング

半月板や膝関節のケアにおいて最も効果的なのが、膝周囲の筋肉(特に太ももとお尻)の強化です。

以下に、自宅でできる簡単なトレーニングをご紹介します。

【おすすめトレーニング①:ヒールスライド】

方法:

  1. 仰向けに寝て、両膝を伸ばす。

  2. 片足ずつ、かかとを滑らせるようにして膝をゆっくり曲げ、また伸ばす。

  3. 10〜15回を目安に、左右交互に実施。

ポイント:

  • 痛みが出ない範囲で行いましょう。

  • ゆっくりとした動作を意識し、太ももの筋肉の動きを感じながら。

【おすすめトレーニング②:クアドセッティング】

方法:

  1. 仰向けに寝るか、膝を伸ばして床やベッドの上に座る。

  2. 片膝の下に丸めたタオルを入れる(膝の下に軽くスペースを作るイメージ)。

  3. 太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を意識して、膝の裏でタオルを押しつぶすように力を入れる。

  4. 約5秒キープした後、力を抜く。

  5. 10〜15回を目安に、左右交互に実施。

ポイント:

  • 筋肉に力を入れたときに、太ももの前側が固くなるのを確認しましょう。

  • 動作中に呼吸を止めず、自然に呼吸を続けましょう。

  • 無理に力を入れすぎないように、心地よい範囲で行ってください。

このような筋力トレーニングを習慣づけることで、膝の安定性が向上し、半月板への負担を減らすことができます。


⑤ PRP療法とは?膝の自然治癒力を活かした新しい選択肢

半月板や関節の損傷に対して、近年注目を集めているのがPRP(多血小板血漿)治療です。

PRPとは?

自分自身の血液から「血小板」を濃縮して取り出し、患部に注射する治療法です。血小板には、組織修復や炎症を抑える成長因子が豊富に含まれており、ケガや関節の損傷部位の再生を促す効果が期待されています。

半月板や変形性膝関節症にも効果的?

研究では、PRP注射を行うことで痛みが軽減し、膝の機能改善が見られたケースも報告されています。とくに、加齢に伴う半月板の変性や初期の変形性膝関節症には、手術をせずに自然治癒力を活かす選択肢として注目されています。


⑥ まとめ

運動がしやすいこの季節は、つい運動量が増えやすく、その分だけ膝への負担も大きくなりがちです。

だからこそ今、自分の膝としっかり向き合い、「予防」と「再生医療」という2つの視点からケアを考えていくことが大切です。

将来にわたって元気に動ける身体を守るために、日々の習慣と最新医療の力を上手に活用していきましょう。

  • 日常生活のなかで軽いストレッチや筋トレを取り入れる

  • 違和感があれば早めに医療機関に相談する

  • PRP治療のような再生医療にも目を向ける

膝は一生使う大切な関節です。痛みが出てからではなく、「予防」と「早期対応」で、元気に歩き続けられる未来を一緒に作っていきましょう。

📚 参考文献一覧

  1. 日本整形外科学会(JOA)公式サイト

    「変形性膝関節症」

    https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/knee_osteoarthritis.html

  2. 整形外科シリーズ|南江堂

    半月板の形態・加齢変性・断裂・治療法などに関する基礎知識

    『標準整形外科学 第14版』(南江堂, 2020)

  3. 国立研究開発法人 科学技術振興機構(J-STAGE)

    Nakagawa, Y., et al. (2018).「PRP療法が変形性膝関節症に及ぼす効果の検討」

    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhpn/4/2/4_53/_article/-char/ja/

  4. American Journal of Sports Medicine

    Filardo, G., et al. (2015). Platelet-rich plasma intra-articular knee injections show no superiority over viscosupplementation.

    https://doi.org/10.1177/0363546515582027

  5. 日本再生医療学会|PRP療法ガイドライン

    「PRP療法の概要と適応」

    https://www.jsrm.jp/

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