はじめに
こんにちは!さくら通り整形外科クリニック 院長の宇賀治 修平です。
7月となり、夏休みを前に多くの学校で部活動が活発となっている時期ですね!
部活で運動している人やスポーツが好きな人の中には、足が「ピキッ」と痛くなってしまった経験がある人もいるのではないでしょうか?
その正体のひとつに「肉離れ」というケガがあります。直訳してMeat bye-byeなんていわれることもありますね。
今回は、そんな肉離れの中でも特によく起こる「ハムストリングス損傷」について、最新の治療法とその効果を解説していきたいと思います。
■ 肉離れとは?どうして起こるの?
まずは「肉離れ」について簡単に説明したいと思います。
肉離れとは、筋肉が強く引き伸ばされたときに、その一部が切れてしまうケガのことです。
特に多いのが、太ももの後ろ側にある「ハムストリングス」という筋肉の肉離れです。
ハムストリングスは、走ったりジャンプしたりするときに大活躍する筋肉です。でも、急に動いたり、筋肉が疲れているときなどに無理な力が加わると、ピキッと切れてしまうことがあります。
特に陸上競技(短距離走・ハードル)やサッカー、バスケットボールなどの競技で受傷してしまうことが多いです。
■ どんな治療があるの?
これまでの治療は主に「保存療法」と呼ばれる方法で、以下のようなものがあります。
- RICE処置
→Rest:安静(無理に動かさない)Ice:アイシング(冷やす)Compress:圧迫(患部を圧迫する)Elevation:挙上(患部を心臓よりも高い位置に挙げる)
- リハビリ
→損傷状況に応じて患部の柔軟性や筋力強化を行います。また、患部外の筋力強化や柔軟性も改善させ、患部への負担も軽減させます。
多くの人はこの保存療法で治っていきますが、治るまでに時間がかかったり、また同じ場所をケガしてしまうこと(再発)があったりするのが問題です。
■ 新しい治療法「血腫吸引」と「PRP注射」ってなに?
近年、ケガの治療法として注目されているのが、次の2つの方法です。
1. 血腫吸引
肉離れをすると、筋肉の中に「血腫(けっしゅ)」と呼ばれる血のかたまりができることがあります。これは、内出血のようなもので、体の中にたまってしまうと、筋肉がうまくくっつかなかったり、治りが遅くなったりします。
そこで、超音波(エコー)を使って、その血腫を針で吸い取る治療が行われるようになりました。
これが「血腫吸引」です。
2. PRP注射
PRPは「多血小板血漿(たけっしょうばんけっしょう)」の略で、自分の血液を使って作る特別な液体です。この中には、「成長因子(せいちょういんし)」という組織の回復を助ける物質がたくさん含まれています。
PRP注射では、ケガをした筋肉にこの液体を注射することで、筋肉の回復を早める効果が期待されています。
■ 実際の研究ではどんな結果だったの?
アメリカで行われたある研究(Trunzら、2022年)では、アスリート55人を対象に、「保存療法」と「血腫吸引+PRP注射」の2つの治療法を比べました。
その結果は以下のようになりました。
項目 | 保存療法 | 血腫吸引+PRP注射 |
---|---|---|
平均復帰日数 | 32.4日 | 23.5日(約9日短縮!) |
再発率 | 28.6%(8人) | 3.7%(1人) |
この結果からわかることは、
🟢 復帰までの期間が大きく短くなる
🟢 再発の可能性がかなり減る
ということです。
これはスポーツ選手にとって目から鱗な情報ではないでしょうか!血腫で埋まっていた部分を吸引するとそこには死腔と呼ばれる空洞ができてしまいます。空洞は埋まるまでに時間を要しますが、その空洞部分に再生力豊かなPRPを入れることで、治癒を促進するというのは理にかなっていますね。
■ 他の研究でも注目されているPRP治療
PRP注射の効果については、他の研究でも報告があります。
たとえば、Gaballahら(2018)の研究では、PRP注射を受けたグループが、受けていないグループよりも筋力の回復が早く、再発も少なかったと報告されています。
一方で、Hamiltonら(2015)の研究では、PRP注射をしてもしなくても復帰までの日数にはほとんど差がなかったという結果も出ています。
つまり、すべての人に効果があるわけではないかもしれませんが、条件が合えば大きな助けになる可能性がある治療なのです。
■ どんな人に向いている治療なの?
この治療法が特に向いているのは、
✅ 大会が近くて、できるだけ早く復帰したい
✅ 以前に同じ場所をケガしたことがある
✅ 筋肉の中に大きな血腫があると診断された
という人です。
ただし、すべての病院で受けられるわけではなく、費用もかかることがあります。治療を受けるかどうかは、医師とよく相談することが大切です。
ちなみに、当院(さくら通り整形外科クリニック)では、エコーでの血腫吸引もPRP治療も実施しているので、お困りの方は来院を一度ご検討してみてください。
■ 理学療法やトレーニングも超重要!
どんなに良い治療をしても、リハビリやトレーニングをきちんと行わないと、またケガをしてしまうこともあります。
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患部、患部外の筋肉の柔らかさを保つストレッチ
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患部、患部外の筋力バランスの調整
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患部と患部外の協調的な動作獲得
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正しいフォームでの走り方やジャンプの練習
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競技特性に合った動作改善 など、
理学療法士やトレーナーの指導を受けながら、体をしっかり整えることが、ケガの再発を防ぐカギになります。
■ まとめ:未来の治療が、今始まっている!
🟡「肉離れ」はスポーツでよくあるケガ。
🟢「血腫吸引+PRP注射」は、復帰を早め再発を防ぐ可能性がある。
🧪 効果には個人差があり、今後の研究も大事。
🏃♀️ 治療だけでなく、リハビリやトレーニングも超重要!
これからもっと進化していくスポーツ医療。
私たちも、ケガをしたら「ただ休むだけ」ではなく、「どう治すか?」「どう戻るか?」を考えることが大切です。
未来の治療が、あなたのパフォーマンスをもっと引き上げてくれるかもしれません!
ちなみに、当クリニック(さくら通り整形外科クリニック)では自由診療としてPRP治療を行っています。当院ではカウンセリングもしておりますので、ご興味のある方はぜひ、一度、受診してお話しだけでも聞いてみてください。
再生医療の無料カウンセリングをご希望の方は、以下のバナーからお申し込みできます。
あなたにとって最適な選択を、一緒に考えていきましょう。
📝参考文献
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Trunz L, Randy J, Dodson C, et al. Effectiveness of Hematoma Aspiration and Platelet-rich Plasma Muscle Injections for the Treatment of Hamstring Strains in Athletes. Medicine & Science in Sports & Exercise. 2022; DOI: 10.1249/MSS.0000000000002758
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Gaballah A, Elgeidi A, Bressel E, et al. Rehabilitation of hamstring strains: does a single injection of platelet-rich plasma improve outcomes? Sport Sciences for Health. 2018;14(3):439–447. DOI: 10.1007/s11332-018-0474-x
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Hamilton B, et al. Platelet-rich plasma does not enhance return to play in hamstring injuries: a randomised controlled trial. Br J Sports Med. 2015;49(14):943–950.