■ はじめに
こんにちは!
今日は、スポーツをしている人はもちろん、日常生活での筋損傷(筋肉の怪我)でお悩みの方にも知ってほしい“PRP療法”について、解説していきたいと思います。
テレビやインターネットで「PRP療法」「再生医療」って言葉を見たことがある方もいるかもしれません。「すごそうだけど、よく分からない…」という声をよく聞きます。
今回は、最新の医学研究を元に「PRPってなに?」「どんな人にいいの?」「本当に効果あるの?」という疑問にお答えします。
◼️「筋損傷」ってなに?肉離れとの違いは?
そもそも、筋損傷とは何かからお伝えしたいと思います。
皆さん、スポーツ中や日常生活で、急に「ピキッ」と痛みが走ったことはありませんか?
そのときに多くの方が経験するのが「筋損傷」です。
① 筋損傷=筋肉が切れたり、裂けたりすること:
筋肉はゴムのように伸び縮みしながら、私たちの身体を動かしています。でも、急な動きや無理な力が加わると、筋肉の線維が切れてしまうことがあります。
この状態が「筋損傷(きんそんしょう)」です。
もっと身近な言葉で言うと…そう、「肉離れ」です!
②肉離れと筋損傷の違いって?:
実は「肉離れ」というのは医学的な用語ではなく、一般的な呼び方。
医学的には「筋損傷」といいます。
つまり、“肉離れ=筋損傷”なんです。
③筋損傷の3段階(グレード):
筋損傷は、傷の深さや広さによって3つのレベル(グレード)に分かれます。
グレード | 状態 | 症状の例 |
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グレード1(軽度) | 筋肉の一部が伸びたり、少し切れた状態 | 動けるけど、違和感や軽い痛みがある |
グレード2(中程度) | 筋肉の一部が部分的に切れている | 歩くと痛い、腫れがある、力が入りにくい |
グレード3(重度) | 筋肉が完全に断裂している | 立てない、激痛、へこみや内出血が見られることも |
④どうやって起きるの?:
筋損傷の原因はさまざまですが、主に以下のような動きで起こります。
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急なダッシュ・ジャンプ・方向転換
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ウォーミングアップ不足
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柔軟性の低下や筋肉疲労
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寒い時期の運動
特に太ももの裏(ハムストリング)やふくらはぎ(腓腹筋)でよく起こります。
⑤症状とセルフチェック:
「これって筋損傷かな?」と思ったときのポイントはこちら:
⬜︎ 痛みがある場所を触るとピンポイントで痛い
⬜︎ 歩く・伸ばす・力を入れると痛い
⬜︎ 腫れや内出血がある
⬜︎ ケガしたとき「ブチッ」という音がした
少しでも思い当たる場合は、すぐに運動をやめて安静にしましょう。
■ PRP療法ってなに?
次に、PRP療法についてお伝えしたいと思います。
「PRP」とは「Platelet-Rich Plasma(プレートレット・リッチ・プラズマ)」の略で、日本語にすると多血小板血漿(たけっしょうばんけっしょう)といいます。
でも、そんな難しい言葉じゃ分かりにくいですよね。
簡単に言うと…
“PRP療法=自分の血を使って、ケガの回復を早める治療”
なんです!
血液の中には「血小板(けっしょうばん)」という小さな成分があります。
この血小板には、傷ついた体の組織を修復する「成長因子」がたくさん含まれていて、ケガの治りを早くしてくれます。
その血小板をたくさん集めて、ケガしている筋肉などに注射することで、回復をサポートするのがPRP療法です。
■ どんなときに使うの?
PRP療法は、こんな場面で使われることがあります:
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スポーツ中の筋肉の断裂(肉離れ=筋損傷)
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膝の痛み(変形性膝関節症など)
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アキレス腱の痛み
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ひじの痛み(テニス肘、ゴルフ肘など)
とくに、「手術は避けたいけど、早く治したい!」という人に向いています。
■ 最新の研究結果で分かったこと
PRP療法の効果について、2023年までにたくさんの研究が行われています。
今回は特に、スポーツ中の「筋肉のケガ」に関する有名な研究をご紹介します。
【研究その①】PRPで復帰が早まる!
アルゼンチンで行われたある研究では、75人のスポーツ選手を以下の2グループに分けて比較しました:
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PRP+リハビリのグループ
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リハビリだけのグループ
その結果…
PRPを使ったグループは、平均4日早くスポーツに復帰できたという結果が出ました!
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PRPあり:21.1日で復帰
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PRPなし:25日で復帰
(※平均値)
さらに、治療中の痛みの強さもPRPを受けたグループのほうが軽かったそうです。
【研究その②】他の研究でも「PRPは効果あり」
また、複数の研究をまとめた「メタアナリシス」という調査では、PRP療法を受けた人は平均で7〜8日ほど早く復帰できたというデータもあります。
■ でも、注意点もあるんです…
再発しないとは限らない
PRP療法を受けると「もう再発しないんじゃないか?」と思ってしまいそうですが、実はそこには大きな差は見られませんでした。
つまり…
“PRPで早くは治るけど、ケガの再発を防げるわけではない。”
ということなんです。
研究によって効果に差もある
実際には、PRPの効果について研究によって結果がバラバラです。
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「すごく効果あり!」という研究もあれば、
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「ほとんど変わらなかった…」という結果もあります。
これは、使い方やタイミング、注射する回数などが研究ごとに違うからです。
■ どんな人に向いてる?
PRP療法はこんな人におすすめです。
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大事な試合が控えていて一日でも早く復帰したいアスリート
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自然な治療(自分の血液)で治したい人
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手術は避けたいけど、なかなか治らない人
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怪我の痛みでリハビリがうまく進まない人
ただし、「どんな人にも効果がある」というわけではありません。専門の先生としっかり相談することが大切です。
■ PRPっていくらするの?保険は使える?
残念ながら、2025年現在ではPRP療法は保険が使えないことが多いです。
クリニックによって費用は違いますが、1回で3万円〜10万円くらいかかることがあります。場合によっては複数回の注射が必要なこともあります。
ちなみに、当クリニック(さくら通り整形外科クリニック)では自由診療としてPRP治療を行っています。当院ではカウンセリングもしておりますので、ご興味のある方はぜひ、一度、受診してお話しだけでも聞いてみてください
再生医療の無料カウンセリングをご希望の方は、以下のバナーからお申し込みできます。
■ まとめ
PRP療法は、自分の血液を使って、ケガの回復を早める新しい治療法です。
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特に筋肉のケガに対して、スポーツ復帰までの時間を短縮する効果が期待されています。
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痛みの軽減にも効果があると報告されています。
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ただし、再発防止にはならないことや、効果の出方に個人差があることには注意が必要です。
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治療を受けたい場合は、整形外科やスポーツドクターに相談してみましょう!
📚参考文献(わかりやすく紹介)
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Rossi L, et al. (2017). 「PRPは筋肉のケガに効果ある?」という研究。PRPありのグループは21日で復帰、なしは25日で復帰!
▶ https://doi.org/10.1007/s00167-016-4129-7 -
Molina Romoli AR, et al. (2020). PRPが早期復帰に効くかどうか、複数の研究をまとめたメタ分析
▶ https://raaot.org.ar/index.php/AAOTMAG/article/view/983 -
Hamid MS, et al. (2014). PRPは急性の筋肉ケガに有効か?システマティックレビュー
▶ https://doi.org/10.1371/journal.pone.0090538 -
Reurink G, et al. (2015). PRPはハムストリングの肉離れに効かない?という研究も
▶ https://bjsm.bmj.com/content/49/14/943
最後にひとこと
「PRPってすごそう!やってみたい!」と思った方も多いかもしれません。でも、大切なのは「今の自分の状態に合っているかどうか」です。
まずは病院で診察を受けて、どんな治療が一番いいのか相談してみましょう。