ー変形性膝関節症と再生医療の現在地ー
膝の痛みで日常生活に支障を来す「変形性膝関節症」。
これまで対症療法や人工関節手術が中心だったこの領域に、再生医療という新たな選択肢が現実的な治療として加わったことは、日本の整形外科医療にとって大きな転換点と言えます。
2026年1月、患者自身の細胞を用いた自家培養軟骨移植術が変形性膝関節症に対して公的医療保険の適用対象となりました。
一方で、すでに臨床現場で広く用いられてきたPRP療法(多血小板血漿療法)も、再生医療の一翼を担う重要な治療法です。
本記事では、
を整理し、変形性膝関節症治療の「今」と「選択肢」を分かりやすく解説します。
変形性膝関節症とは何か

変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減ることで炎症や痛みが生じ、関節の変形や可動域制限を引き起こす疾患です。
加齢、体重負荷、筋力低下、アライメント異常などが複合的に関与し、国内では推定1000万人以上が罹患しているとされています。
初期には違和感や軽い痛み程度ですが、進行すると歩行・階段昇降・立ち座りといった基本動作が困難になり、生活の質(QOL)を大きく低下させます。
従来の治療とその限界
これまでの治療は主に以下の3本柱でした。
これらは症状緩和や機能改善には有効ですが、失われた軟骨そのものを再生する治療ではないという限界がありました。
再生医療という新たな選択肢
こうした背景の中で注目されてきたのが再生医療です。
再生医療は、損傷した組織の「修復」ではなく、生体が本来持つ治癒力を引き出す、あるいは組織そのものを再構築する治療を目指します。
整形外科領域では、主に以下の2つが代表的です。
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PRP療法とは ― 従来から実践されてきた再生医療
● PRP療法の仕組み
PRP療法は、患者自身の血液を採取し、遠心分離によって血小板を高濃度に含む血漿(PRP)を抽出し、患部に注射する治療法です。
血小板には、
が多く含まれており、これらが炎症の抑制や組織修復環境の改善に寄与します。
● PRP療法の魅力
PRP療法の最大の魅力は以下の点にあります。
① 低侵襲で身体への負担が少ない
採血と注射のみで行えるため、手術を伴わず高齢者にも適応しやすい治療です。
② 自己血液由来で安全性が高い
自己由来の成分を使用するため、アレルギーや拒絶反応のリスクが極めて低いのが特徴です。
③ 炎症抑制と疼痛軽減効果
軟骨の「再生」そのものよりも、関節内環境を改善し、痛みを和らげる効果に優れています。
④ 比較的導入しやすい
培養工程を必要としないため、治療までの期間が短く、医療機関側・患者側双方のハードルが低い治療法です。
● PRP療法の限界
一方で、PRP療法には明確な限界もあります。
つまりPRP療法は、「再生を促す環境づくり」や「痛みのコントロール」に強みを持つ治療と位置づけられます。
自家培養軟骨移植術 ― 根本改善を目指す治療
今回保険適用となった自家培養軟骨移植術は、
患者自身の軟骨細胞を体外で培養し、欠損部に移植することで軟骨組織そのものの再構築を目指します。
PRP療法と比較すると、
という側面はありますが、構造的な軟骨再生を狙える点が最大の特徴です。
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PRP療法と自家培養軟骨治療の位置づけ
両者は「優劣」の関係ではなく、病期・症状・患者背景によって使い分ける治療です。
| 観点 | PRP療法 | 自家培養軟骨 |
|---|---|---|
| 侵襲 | 非常に低い | 手術あり |
| 主目的 | 炎症抑制・疼痛緩和 | 軟骨の再構築 |
| 適応 | 軽度~中等度 | 中等度~限局病変 |
| 治療期間 | 短い | 長期 |
| 費用 | 比較的低い | 高額(保険適用) |
再生医療時代の膝治療とは
再生医療の普及により、変形性膝関節症治療は、
痛みを「抑える」治療から関節を「守り、再生を促す」治療
へとシフトしつつあります。
PRP療法は早期介入・保存的治療の延長線上に位置し、
自家培養軟骨治療は、より踏み込んだ根本改善を目指す治療です。
PRP治療の無料カウンセリングをご希望の方は、以下のバナーからお申し込みできます。
おわりに
今回の保険適用は、再生医療が特別な先進医療ではなく、現実的な選択肢として位置づけられたことを意味します。
同時に、PRP療法のような既存の再生医療も、依然として重要な役割を担い続けます。
患者一人ひとりの状態に応じて、適切な治療を選択する時代が本格的に始まったと言えるでしょう。
膝の痛み治療は、今まさに「新しい段階」へと進んでいます。



