【医師監修】膝の水を抜くとクセになる?原因と治療法~PRP治療で根本改善をめざす~

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はじめに

こんにちは!さくら通り整形外科クリニックです!

いよいよ夏本番を感じる季節となってまいりましたが、皆さま体調はいかがでしょうか?

外でのレジャーや運動の機会が増えるこの時期は、関節に負担がかかりやすく、痛みを訴える方も増えている印象です。

特に最近は「膝が腫れている」「膝に水がたまってしまった」といったお悩みでご相談いただくケースが目立ちます。

今回は、“膝の水⁈”について分かりやすくご説明するとともに、当院で提供しているPRP治療についてもご紹介いたします。


膝に水がたまるとはどういう状態?

「膝に水がたまる」とは、膝関節の中にある関節液が通常よりも多く分泌され、関節内に過剰にたまってしまった状態を指します。

この関節液は、普段は関節の動きをスムーズにする潤滑油のような役割や、関節軟骨に栄養を届ける役割を担っています。

しかし、何らかの刺激や炎症が起こると、関節液が過剰に分泌され、結果として膝が腫れたり、痛んだり、動きにくくなったりするのです。


膝に水がたまる原因とは?

膝に水がたまる主な原因は、「滑膜(かつまく)の炎症」です。

滑膜とは、関節包の内側を覆っている薄い膜で、関節液の生成や吸収を行っています。この滑膜に炎症が起きることで、関節液が過剰に分泌されるのです。

以下のような疾患・外傷が滑膜炎を引き起こします。

① 変形性膝関節症(中高年に多い)

加齢や過度な使用により、膝の関節軟骨がすり減ると、その摩耗片が滑膜を刺激して炎症を引き起こします。

膝に違和感を感じ始めた段階で、すでに関節内では炎症が進んでいるケースも少なくありません。

② 半月板損傷・靱帯損傷(若年層~スポーツ選手に多い)

スポーツ中の衝突やひねり動作により、半月板や靱帯に損傷が生じると、同時に滑膜が炎症を起こし、関節液がたまりやすくなります。

③ 関節リウマチ・痛風などの全身性疾患

関節リウマチは免疫異常によって関節に慢性の炎症が生じる疾患で、関節液の産生が増加します。痛風は尿酸の結晶が関節に沈着し、急激な炎症を引き起こします。


膝の水を抜くメリットと注意点

◉ 水を抜くことで得られるメリット

  1. 症状の緩和

     → 腫れや痛みが軽減し、可動域も広がります。

  2. 診断の補助

     → 関節液の色や性状(透明・黄色・濁っているか)などから、炎症の種類や感染の有無などを推測できます。

◉ よくある誤解:「水を抜くとクセになるのか?」

結論から言えば、「水を抜く=クセになる」ということはありません。

何度も水がたまるのはあくまで炎症が続いているからであり、水を抜くこと自体が問題ではありません。

再発を防ぐためには、「水を抜くこと」ではなく「炎症を治すこと」が大切です。


膝に水がたまったときの症状

関節液がたまることで、以下のような症状が現れることがあります。

  • 膝の腫れや重だるさ

  • 関節の可動域制限(曲げにくい・伸ばしにくい)

  • 正座や階段の昇り降りの困難

  • 歩行時の違和感や痛み

こうした症状が現れた場合は、自己判断せず整形外科などの専門医療機関を受診することが大切です。


PRP治療とは?膝の水の根本的な改善をめざす

PRP治療(Platelet-Rich Plasma:多血小板血漿療法)は、患者様ご自身の血液から抽出した血小板を膝に注入する治療法です。

血小板には「成長因子(グロースファクター)」と呼ばれる組織修復を促す物質が含まれており、炎症を鎮めると同時に、軟骨や靱帯などの組織の修復を促します。

◉ PRP治療の特徴

  • 自己血液由来で安全性が高い

  • 膝関節の炎症を抑制し、再発リスクを軽減

  • 薬剤に頼らない自然治癒力の活用

慢性的に膝に水がたまりやすい方、繰り返し水を抜いている方にとって、PRP治療は「根本原因に対する治療」として有効です。


PRP治療が向いている方

  • 変形性膝関節症と診断されたが、手術は避けたい方

  • 痛み止めやヒアルロン酸注射では効果が薄い方

  • 水がたまりやすく、繰り返し抜いている方

  • 関節の機能を保ちながら、できるだけ自分の足で歩き続けたい方

このような方は、ぜひ一度当院までご相談ください。カウンセリングでは、関節の状態に応じてPRP治療の適応を丁寧にご案内いたします。


最後に|早期発見・早期治療が膝を守るカギ

膝に水がたまるというのは、単なる「老化」や「使いすぎ」だけが原因ではありません。関節内で何らかの炎症が起こっているサインでもあります。

水を抜いても繰り返すような場合は、炎症の原因を見極めた上で、根本治療を行うことが重要です。

PRP治療をはじめとする再生医療は、将来の手術を避けたい方にとっても有力な選択肢となり得ます。

気になる症状がある方は、お早めにご相談ください。


📚参考文献

  1. 日本整形外科学会. 変形性膝関節症. https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/knee_osteoarthritis.html

  2. 厚生労働省. 再生医療等製品・再生医療等の定義と分類.

  3. Filardo G, et al. Platelet-rich plasma intra-articular knee injections show no superiority versus viscosupplementation. A randomized controlled trial. The American Journal of Sports Medicine, 2015.

  4. Sánchez M, et al. Intra-articular injection of an autologous preparation rich in growth factors for the treatment of knee OA. Arthroscopy, 2008.

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