膝に水がたまる原因と、抜いても繰り返す人の共通点 ― 水の正体と治療の考え方

椅子に腰かけた人が、少し腫れた膝を両手でそっと包んでいる膝のアップのアイキャッチ(「膝に水がたまる 繰り返す理由」の文字入り) ブログ
この記事の要点
  • 膝の「水」は、関節の中にもともとある関節液です。炎症があると増えて、たまります。
  • 水がたまるのは「結果」で、その原因は変形性膝関節症、半月板の傷、結晶による炎症などさまざまです。
  • 水を抜くこと自体が、たまる原因になるわけではありません。
  • 抜いても繰り返す場合は、原因となっている炎症が続いていると考えられます。
  • 原因を確かめ、それに合わせた治療と、膝への負担を減らす取り組みを組み合わせます。

「膝が腫れてきて、病院で水を抜いてもらった。でも、しばらくするとまた腫れてくる」。膝に水がたまる経験をした方からは、こうしたお話をよくうかがいます。「一度抜くと癖になる」と聞いて、抜くのをためらっている方もいるかもしれません。

この記事では、膝の水とは何か、なぜたまるのか、抜いても繰り返す方に共通しやすいことは何かを整理します。ご自身の膝で何が起きているのかを知り、診察で相談するときの手がかりにしていただくための記事です。実際の原因と治療は、診察と検査のうえで医師が判断します。

膝の「水」の正体

膝の関節の中には、もともと少量の関節液があります。関節液は、関節を包む袋の内側にある滑膜(かつまく)という膜でつくられ、関節の動きをなめらかにしたり、軟骨に栄養を届けたりしています。

膝の中で炎症が起きると、滑膜が刺激されて関節液が多くつくられ、関節の中にたまります。これが「膝に水がたまる」状態で、医学的には関節水腫(かんせつすいしゅ)と呼ばれます。

ふだんの膝
水がたまった膝
  • 水色:関節液
  • ピンクの点線:関節を包む袋(内側が滑膜)
  • ベージュ:骨(上が太ももの骨、下がすねの骨、左の楕円が膝のお皿)

膝を横から見たところを単純にしたイメージ図です(左が体の前側)。炎症で関節液が増えると、お皿の上や周りがふくらみます

  • 膝のお皿のまわりがぷっくり腫れている
  • 膝が重い、張っている感じがする
  • 曲げ伸ばしがしにくい、正座がしにくい
  • 左右の膝を比べると、片方だけ形が違って見える
ソファに腰かけた人の両膝のアップ。片方の膝だけ、お皿のまわりが少しふっくら腫れている
※ 写真はイメージです

こうした変化があるときは、膝に水がたまっている可能性があります。水そのものが悪者なのではなく、膝の中で何かが起きていることを知らせるサインと考えると分かりやすいと思います。

水がたまる主な原因

膝に水がたまる原因は、ひとつではありません。主なものを整理すると、次のようになります。

原因どんなものかこんな方に多い・特徴
変形性膝関節症膝の軟骨がすり減り、関節に炎症が起きる病気中高年の方に多く、膝に水がたまる原因としてよくみられます
半月板・靱帯の損傷膝のクッションの役割をする半月板や、膝を支える靱帯の傷スポーツや転倒などのけがのほか、年齢とともに半月板が傷みやすくなることもあります
偽痛風・痛風関節の中にできた結晶が、急な炎症を起こすもの急に強く腫れて痛み、熱をもつことがあります
関節リウマチなど体の免疫のしくみが関わり、関節に炎症が続く病気膝以外の関節(手指など)にも腫れやこわばりが出ることがあります
細菌の感染関節の中に細菌が入り、炎症を起こすもの(化膿性関節炎)赤み・熱感・強い痛み・発熱を伴うことがあり、早めの治療が必要です

※ 主なものを挙げた一般的な説明です。ほかの原因のこともあり、いくつかが重なっていることもあります。

また、けがのあとに膝が腫れた場合は、関節の中に血が混じってたまっていることもあります。この場合は、骨や靱帯、半月板が傷ついていないかを確かめる必要があります。

原因を確かめる検査

診察台で脚を伸ばした人の膝を、医師が両手でそっと触れて腫れを確かめている手元
※ 写真はイメージです

水がたまっているときは、次のような方法で原因を確かめます。どの検査を行うかは、膝の状態を診察したうえで決めます。

  • 水を抜いた場合は、その色や濁りを見る。必要に応じて液を詳しく調べる
  • レントゲンで、骨の形や関節のすき間を確かめる
  • 半月板・靱帯・軟骨などを確かめたいときは、MRIを追加する
  • ほかの病気が疑われるときは、血液検査を行う

当院ではMRIを院内に設置しています。関節液の色や濁りは、原因を考える手がかりのひとつです。たとえば、黄色く澄んでいるか、濁っているか、血が混じっているかによって、考えられる原因が変わってきます。

「水を抜くと癖になる」は本当か

「一度水を抜くと、癖になってまたたまる」という話を耳にすることがあります。けれども、水を抜くこと自体が、水がたまる原因になるわけではありません。

水がたまるのは、膝の中で炎症が続いているからです。抜いたあとも炎症が残っていれば、関節液は再びつくられて、またたまります。これが「抜くと癖になる」と感じられる理由と考えられます。くり返しているのは「抜いたこと」ではなく、「炎症の原因が続いていること」です。

水を抜くことには、こんな意味があります

たまった水を抜くと、膝の張りや重さがやわらぎ、曲げ伸ばしがしやすくなることがあります。また、抜いた液を見ることで、原因を考える手がかりが得られます。一方で、抜くだけでは炎症の原因そのものは解決しません。抜くかどうか、抜いたあと何をするかは、膝の状態に合わせて決めます。

水を抜く処置(関節穿刺〔かんせつせんし〕)は、膝に針を刺して行います。まれに、細菌が入って感染を起こすことや、内出血が起きることがあります。処置のあとに赤みや熱、強い痛みが出てきた場合は、早めにご連絡ください。

抜いても繰り返す人に共通すること

畑でしゃがんで野菜の手入れをしている女性が、手を止めて膝に手を置いている
※ 写真はイメージです

水を抜いてもまたたまる、という方には、次のような共通点がみられることがあります。いくつかが重なっていることも少なくありません。

  1. 原因となっている炎症が続いている水を抜いて腫れが引いても、炎症のもとが残っていれば、関節液は再びつくられます。原因がはっきりしないまま、抜くことだけをくり返している場合は、あらためて原因を確かめることが大切です。
  2. 変形性膝関節症が背景にある軟骨のすり減りがあると、膝を使うたびに関節に刺激が加わり、炎症が起きやすい状態が続きます。半月板の傷が重なっていることもあります。
  3. 膝を支える筋力が落ちている太ももの筋肉などが弱ると、歩くときや立ち上がるときに膝が不安定になり、関節への負担が増えやすくなります。腫れて動かさない期間が続くと、筋力がさらに落ちやすくなります。
  4. 膝に負担がかかる生活が続いているしゃがむ作業や正座、長時間の立ち仕事、重い物を持つ作業などが続くと、膝への刺激が重なります。体重が増えたときも、膝への負担は大きくなります。

どれが当てはまるかは、診察と検査で確かめないと分かりません。ご自身で「変形性膝関節症のせいだろう」と決めてしまわず、繰り返しているときこそ、原因を一度整理することをおすすめします。変形性膝関節症の進み具合と治療の違いについては、変形性膝関節症の進行度と治療の違いで整理しています。

繰り返さないために取り組むこと

リハビリ室で、男性が椅子から立ち上がる練習をし、理学療法士がそばで見守っている様子
※ 写真はイメージです

治療は、原因に合わせて組み立てます。腫れや痛みをやわらげることと、たまりにくい膝の状態をつくることの、両方に取り組むのが基本です。

  • 腫れと痛みをやわらげる張りが強いときは水を抜くことがあります。痛みや炎症に応じて、飲み薬・湿布・塗り薬、ヒアルロン酸やステロイドなどの関節内注射を組み合わせます。
  • 原因の病気を治療する結晶による炎症、関節リウマチ、感染など、原因によって必要な治療は異なります。専門的な治療が必要な場合は、連携する医療機関にご紹介します。
  • 膝を支える力をつける理学療法士と一緒に、太ももの筋力や膝の動きを保つ運動に取り組みます。腫れや痛みの程度に合わせて、無理のない内容から始めます。
  • 膝への負担を減らすしゃがむ・正座するなどの動作の工夫、体重の管理、靴やサポーターの見直しなどで、日々の膝への刺激を減らします。

注射やお薬には、それぞれ副作用やリスクがあります。たとえば関節内注射では、まれに感染や、注射のあとに一時的に痛みや腫れが強くなることがあります。どの方法も、すべての方に同じように効果があるわけではありません。腫れがおさまっても、膝の負担を減らす取り組みは続けていくことが大切です。

何から始めて、どの順番で次の治療を考えるのかは、本体サイトの変形性膝関節症の治療は何から始めるのかで整理しています。

手術についての当院の体制

半月板や靱帯の損傷、変形の程度などによっては、手術が検討されることがあります。当院では手術は行っておりません。手術が必要と判断した場合は、連携する医療機関にご紹介します。紹介先で手術を受けたあとのリハビリテーションは、当院で継続していただけます。

水がたまる原因は、診察と検査で確かめます

ほかの医療機関で水を抜いている方も、ご相談いただけます。保険診療での診察・検査から始めます。

お電話でのご予約は 0776-58-7138

こんなときは、早めに受診してください

次のような場合は、感染や骨・靱帯のけがなど、早めの対応が必要な原因も考えられます。様子を見ずに、早めに受診してください。

  • 膝が急に大きく腫れた
  • 膝が赤くなり、熱をもっている、熱が出た
  • けがのあとに腫れて、体重をかけられない
  • 水を抜いたり注射をしたりしたあとに、赤み・熱・強い痛みが出てきた

よくいただくご質問

水がたまったままにしておくと、どうなりますか

水がたまっていると、膝が張って曲げ伸ばしがしにくくなり、動かさないうちに筋力が落ちやすくなります。また、水がたまっているのは膝の中で炎症が起きているサインです。様子を見るか、抜くかを含めて、一度診察で原因を確かめることをおすすめします。

水を抜くと痛いですか

針を刺すため、ちくっとした痛みはあります。痛みの感じ方には個人差があります。抜いたあとは、膝の張りがやわらぐと感じる方もいます。処置のあとの過ごし方は、そのつどご説明します。

何度も抜いていますが、大丈夫でしょうか

抜くこと自体が膝を悪くするわけではありません。ただし、何度もたまるのは炎症の原因が続いているサインです。原因をあらためて確かめ、抜く以外の治療や、膝の負担を減らす取り組みを組み合わせることを考えます。

水がたまっているときは、動かさないほうがよいですか

腫れや痛みが強い時期は、無理をせず膝を休めることが大切です。一方で、長く動かさないでいると筋力が落ち、膝が固くなりやすくなります。どのくらい動かしてよいかは膝の状態によって異なりますので、医師や理学療法士にご相談ください。

ほかの病院で水を抜いています。相談できますか

ご相談いただけます。これまでの経過やお薬手帳、検査の結果などがあればお持ちください。必要に応じて、当院であらためて検査を行うことがあります。

まとめ

膝の「水」は、関節の中にもともとある関節液で、炎症があると増えてたまります。原因には、変形性膝関節症、半月板や靱帯の損傷、結晶による炎症、関節リウマチなどの病気、細菌の感染などがあります。

水を抜くこと自体が癖になるわけではなく、抜いても繰り返すのは、原因となる炎症が続いているためと考えられます。繰り返している方こそ、原因を確かめ、腫れをやわらげる治療と、膝を支える力をつけ負担を減らす取り組みを組み合わせていくことが大切です。

保険診療以外の選択肢(自費診療)も含めて治療の全体像を知りたい方は、膝の痛みの治療法を一覧で比較を、自費診療を考える前に確かめておきたいことは、膝の痛みで自費診療を考える前に ― 保険でできることをやり切るをご覧ください。

繰り返す膝の水は、原因を知るところから

保険診療での診察・検査・リハビリからご相談いただけます。

宇賀治 修平 院長
監修

宇賀治 修平(うがじ しゅうへい)

さくら通り整形外科クリニック 院長/整形外科専門医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター
福井県福井市日之出4-11-17

この記事を執筆した人
宇賀治 修平 院長
宇賀治 修平
  • 医学博士
  • 日本整形外科学会整形外科専門医
  • 日本足の外科学会認定医
  • 日本スポーツ協会認定スポーツドクター
  • 日本骨粗鬆症学会認定医
  • 日本整形外科学会認定リハビリテーション医

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