- 膝の痛みの治療は、大きく「保存療法・関節内注射・ひざラジオ波治療・PFC-FD療法・手術」の5つに分けられます。
- それぞれ目的が異なるため、「どれが一番か」ではなく「どの順番で組み合わせるか」が大切です。
- 保険で受けられる治療と、自費診療の治療があります。
- 選ぶときの判断軸を3つに整理しました。
膝の痛みで調べものをしていると、リハビリ、ヒアルロン酸注射、ラジオ波、血液を使った注射、人工関節など、さまざまな治療の名前が出てきます。ところが、それぞれの治療が何を目的にしていて、どういう位置づけにあるのかを一度に見渡せる情報は、意外と多くありません。
この記事では、当院で扱っている膝の治療を中心に、選択肢の全体像を一覧で整理します。どの治療が優れているかを比べるためのものではありません。自分が今どこにいて、次に何を考えればよいのかをつかむための地図としてお使いください。
まず全体像:膝の痛みの治療は5つに分けられる
- 1. 保存療法リハビリ、薬、装具、体重のコントロールなど。すべての治療の土台になります。
- 2. 関節内注射ヒアルロン酸やステロイドを膝に注射し、痛みや炎症を落ち着かせます。
- 3. ひざラジオ波治療膝の痛みを伝える神経に働きかける治療です。当院では保険適用で行っています。
- 4. PFC-FD療法ご自身の血液から取り出した成分を使う注射です。自費診療です。
- 5. 手術骨切り術や人工膝関節置換術など。変形が進んだ場合の選択肢です。

番号は、おおむね検討する順番を表しています。ただし「1が終わったら2へ」と単純に切り替わるわけではありません。保存療法は、注射やラジオ波、手術を選んだあとも続けていく土台です。上の段に進むほど、下の段の積み重ねが結果に影響します。
5つの治療を一覧で比較する
| 治療 | 保険 | 主な目的 | 通院・体への負担 | 知っておきたい点 |
|---|---|---|---|---|
| 保存療法 | 適用 | 筋力・動き方・体重など、膝に負担がかかる要因を減らす | 通院は定期的。体への負担は小さい | 結果が見えるまでに時間がかかる |
| 関節内注射 | 適用 | 痛みや炎症を落ち着かせる | 数分で終わる。定期的な通院が必要 | 効いている期間に限りがある |
| ひざラジオ波治療 | 適用 | 痛みを伝える神経の働きを抑える | 入院は不要 | 関節の変形そのものを治す治療ではない |
| PFC-FD療法 | 自費 | ご自身の血液由来の成分を膝に届ける | 採血と注射で通院は2回以上 | 効果に個人差が大きく、全額自己負担 |
| 手術 | 適用 | 変形した関節を矯正する、または置き換える | 入院とリハビリ期間が必要 | 体への負担と回復期間が最も大きい |
表の右端の列に注目してください。どの治療にも、得意なことと限界があります。すべてを一度に解決できる治療はありません。だからこそ、目的の違う治療を順番に、あるいは組み合わせて使っていくことになります。
1. 保存療法 ― すべての土台になる治療
保存療法とは、手術をせずに症状を和らげる治療の総称です。「保存」という言葉から、何もせず様子を見るような印象を持たれる方もいますが、実際には積極的に取り組む治療です。
運動療法(リハビリ)
太ももの前側やお尻の筋力が落ちると、膝の関節が受け止める負担が増えます。関節の動く範囲が狭くなったり、歩き方にくせがついたりしていることもあります。理学療法士が状態を評価したうえで、一人ひとりに合った運動を組み立てます。当院には理学療法士が11名在籍しています。
薬(内服・外用)
痛みや炎症を抑える飲み薬、湿布や塗り薬を使います。胃腸や腎臓への影響、ほかに飲んでいる薬との組み合わせを確認しながら選びます。薬は痛みをやわらげてリハビリに取り組みやすくするためのもので、それだけで膝の状態を変えるものではありません。
装具・インソール、体重のコントロール
膝のサポーターや靴の中敷きは、膝にかかる力のかかり方を変えるための道具です。また、歩くときに膝には体重の数倍の力がかかるとされており、体重のコントロールは膝の負担そのものを減らせる数少ない方法です。
2. 関節内注射 ― 痛みと炎症を落ち着かせる
ヒアルロン酸注射
ヒアルロン酸は、もともと関節の中にある液体の成分です。これを注射で補うことで、関節の動きをなめらかにし、痛みを和らげることを目的としています。はじめは間隔を詰めて数回行い、その後は様子を見ながら間隔を空けていくのが一般的です。
ステロイド注射
炎症を強く抑える作用があり、膝が腫れて熱を持っているときなどに使います。一方で、頻繁に繰り返すと関節の組織に影響を与える可能性があるため、回数を限って使います。
注射はどちらも、痛みが落ち着いている間にリハビリを進めるための「時間を作る」治療と考えるとわかりやすくなります。注射だけを続けて、筋力や動き方の課題がそのまま残っていると、効いている期間が徐々に短くなっていくことがあります。
3. ひざラジオ波治療 ― 痛みを伝える神経に働きかける

ひざラジオ波治療は、膝の周りにある「痛みを脳に伝える神経」に細い電極を近づけ、ラジオ波で熱を加えることで、痛みの信号を伝わりにくくする治療です。当院では保険適用の範囲で行っており、入院は必要ありません。
大切なのは、この治療が関節の変形そのものを治すものではないという点です。軟骨がすり減った状態は変わりません。痛みを伝える経路に働きかけることで、日常生活での痛みを軽くすることを目指します。神経は時間とともに回復するため、痛みが戻ってくることもあり、効果の続く期間には個人差があります。
保存療法や注射を続けても痛みが十分に取れない方、手術を受けるほどではない、あるいは持病などで手術が難しい方にとって、次に検討できる選択肢のひとつです。詳しくはひざラジオ波治療のページをご覧ください。
4. PFC-FD療法 ― 自費診療の選択肢
PFC-FD療法は、患者さんご自身の血液を採取し、その中から組織の修復に関わる成分を取り出して加工したものを、膝の関節内に注射する治療です。採血した日から加工に時間がかかるため、注射は後日あらためて行います。
公的医療保険が適用されない自費診療です。また、変形が大きく進んだ段階では期待できる効果が限られること、同じように注射をしても感じ方に大きな個人差があることを、当院では診察の場で率直にお伝えしています。保険診療でできることを尽くしたうえで、それでも残る痛みに対して検討する選択肢と位置づけています。
ひざラジオ波治療は「痛みの伝わり方」に、PFC-FD療法は「関節の中の環境」に働きかけることを目的としています。狙っているところが違うため、単純にどちらが上ということはありません。どちらが合うかは、膝の状態と困っていることによって変わります。
5. 手術 ― 変形が進んだ場合の選択肢
骨切り術
すねの骨の一部を切って角度を変え、O脚などの脚の形を矯正する手術です。膝の内側に偏っていた負担を外側に分散させます。ご自身の関節を残せるため、比較的若く活動量の多い方に検討されることが多い手術です。
人工膝関節置換術
傷んだ関節の表面を、金属や樹脂でできた人工の関節に置き換える手術です。変形が大きく進み、日常生活に強い支障が出ている場合に検討されます。入院と、術後のリハビリ期間が必要です。
手術は「最後の手段」として避けるべきものではありません。変形が大きく進んでいる場合、ほかの治療では痛みを十分に抑えられないこともあります。当院では手術は行っておりません。手術を含めて検討する段階になった場合は選択肢をご説明し、手術を行う医療機関にご紹介します。紹介先で手術を受けたあとのリハビリテーションは、当院で継続していただけます。
どう選べばいいのか ― 3つの判断軸

判断軸1:診断 ― 変形はどの程度か
レントゲンで骨の変形の程度を確認し、必要に応じてMRIで半月板や靱帯、骨の内部まで確認します。当院では院内にMRIがあります。同じ「膝の痛み」でも、原因が変形性膝関節症なのか、半月板の損傷なのかによって、合う治療は変わります。
判断軸2:生活で困っていること
画像上の変形の程度と、痛みの強さは必ずしも一致しません。変形が進んでいても日常生活にはあまり困っていない方もいれば、変形は軽くても痛みが強い方もいます。仕事や趣味、家事の中で何ができなくて困っているのかは、治療を選ぶうえで画像と同じくらい大切な情報です。
判断軸3:これまでに受けてきた治療
リハビリをどのくらいの期間続けたか、注射の効き方がどう変わってきたかによって、次に検討すべき治療が変わります。これまでの経過を具体的にうかがうのはそのためです。
保険診療でできることをどこまで試してから、次の選択肢を考えればよいのか。その目安については、膝の痛みで自費診療を考える前に ― 保険でできることをやり切る、という順番の話で詳しくご説明しています。
よくいただくご質問
いくつかの治療を同時に受けることはできますか
保険診療の治療どうしは組み合わせて行えます。たとえばリハビリを続けながら注射を受ける、ラジオ波治療のあともリハビリを続ける、といった形です。一方で、保険診療と自費診療は同じ日に組み合わせることができないため、PFC-FD療法を受ける日は別に設けます。
注射を続けていれば、手術にならずに済みますか
注射によって変形の進行を止められる、とは言えません。注射は痛みや炎症を落ち着かせることが主な目的です。ただ、痛みが落ち着いている間にリハビリや体重のコントロールに取り組むことは、膝の負担を減らすうえで意味があります。
手術を勧められましたが、ほかの治療を試すことはできますか
現在の膝の状態を確認したうえで、ほかに検討できる選択肢があるかどうかをご説明します。ただし、変形が大きく進んでいる場合には、手術以外の方法では十分な効果が期待しにくいこともあり、その場合は正直にお伝えします。
まとめ
膝の痛みの治療には、保存療法、関節内注射、ひざラジオ波治療、PFC-FD療法、手術という5つの選択肢があります。それぞれ目指しているところが異なり、得意なことと限界があります。大切なのは、ひとつの治療に答えを求めることではなく、診断、生活で困っていること、これまでの治療歴の3つを踏まえて、順番と組み合わせを考えることです。
「自分はいまどの段階にいるのか」「次に何を試せばよいのか」がわからない方は、一度ご相談ください。現在の膝の状態を整理し、保険でまだできることがあればそれをお伝えし、次の段階を考える時期であればその選択肢をご説明します。
さくら通り整形外科クリニック(福井市日之出)/整形外科・リハビリテーション科
整形外科専門医による診察/院内MRI/理学療法士11名/駐車場50台
- 公的医療保険の適用について
- 本治療は自由診療であり、公的医療保険は適用されません。費用は全額自己負担となります。
- 標準的な費用
- スタンダード(PFC-FD):1回 163,000円/2回 251,000円/3回 350,000円
プレミアム(PFC-FD 2.0・5.0):1回 328,000円/2回 548,000円/3回 713,000円
いずれも税込。採血・血液の加工・注射までの費用を含みます。医療費控除の対象となる場合があります。 - 治療の内容
- 患者さんご自身の血液を約50mL採取し、国(厚生労働大臣)の許可を受けた特定細胞加工物製造施設で、感染症検査のうえ加工します。加工にはおよそ3週間かかり、後日あらためて膝関節内に注射します。採血日と注射日は別の日となります。
- 主なリスク・副作用
- 注射部位の痛み、腫れ、熱感、内出血、血腫が生じることがあります。まれに関節内の感染、神経の損傷、アレルギー反応を起こす可能性があります。採血に伴い、気分不良やめまい(血管迷走神経反応)が生じることがあります。効果には個人差があり、十分な効果が得られない場合があります。
- 未承認医薬品等であることについて
- 本治療に用いるPFC-FDは、医薬品医療機器等法上の承認を受けた医薬品ではありません。医薬品ではないため、医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。
- 入手経路等
- 患者さんご自身から採取した血液を原料とし、国(厚生労働大臣)の許可を受けた特定細胞加工物製造施設において加工されたものを使用します。医師の個人輸入によるものではありません。
- 国内の承認医薬品等の有無
- 本治療と同一の効能・効果で国内の承認を得た医薬品はありません。
- 諸外国における安全性等に係る情報
- 【要確定:リーガルチェックのうえ記載。海外における同種治療の規制上の位置づけ、重大な副作用の報告状況を事実ベースで記載する必要があります】
- お問い合わせ先
- さくら通り整形外科クリニック 電話 0776-58-7138/福井県福井市日之出4-11-17


